みなさんこんにちは、保育士のみちるです。
みなさんは、「アクティブラーニング」と言う言葉をご存知でしょうか?
実は、このアクティブラーニング。
10年ほど前から、大学や高校で使われだした言葉です。
これからの時代、今よりもっと、グローバル化や情報化が進んでいきます。
時代に対応していくためには、教員の講義を聞くだけでなく
教員と学生がコミュニケーションを重ねながら「主体的に答えを見いだす」授業が必要だ!ということになりました。
授業は「何を学ぶか」でなく「いかに学ぶか」を重視した教育をしていこう!となったのです。
そして、小学校や中学校教育においてもアクティブ・ラーニングが注目されるようになりました。
「活動する」「自分で調べる」「体験する」「話し合う」「実験する」などに重きを置いた授業が見直されました。
それでは幼児教育も!ということになりましたが…
実は、幼時期の子どもは自分の興味や好奇心から主体的に動いています。
すでに毎日がアクティブ・ラーニングなのです。
でも「アクティブラーニング」を意識した保育って?
いったいどういった保育なのでしょうか?
すでに幼児期の子ども達はアクティブラーニングしているとは言うものの。
本当に今のままの保育でOKなのでしょうか。
もっと子どもたちの「学び」を支える保育のカタチがあるのではないでしょうか。
わたし達が保育で、見直すところ、変えていけるところを意識することで
何気ない日常の保育が好奇心を育むアクティブラーニングする保育になるのです。
今日はこの「アクティブラーニングする保育」日本風に言うと
「主体的、対話的で深い学習をする保育」を学んでいきたいと思います。
まずは、アクティブラーニングの言葉から理解しましょう。
アクティブラーニングとは?
アクティブラーニング(active learning)とは「主体的、対話的で深い学習」とも呼ばれる学習スタイルで、学習者が能動的に学習に取り組む学習法の総称としても使われます。
授業を聞くだけでなく、みずからが考え積極的に授業運営に参加していくことで、
確かな学習効果を得られる手法とされています。
体験学習やグループ学習の意味に使われることもありますが、
ポイントは何を学ぶかではなく、いかに学ぶか。
主体的に学習するということが条件になります。
この考え方は欧米では早くから取り入れられており、
日本では大学教育において使われはじめた言葉です。
政府方針で、今後は義務教育にもその学習方法を導入していくことが決められています。
アクティブラーニングする保育
アクティブラーニングの保育は4つのプロセス、
「起承転結」の流れを意識することで始めることができます。
4つのプロセス
①起「出会いをプロデュースする」
②承「疑問を抽出する、仮説を立てて、活動する」
③転「過程を楽しむ、柔軟に移行する」
④結「保育ドキュメンテーションで共有する」
参考文献
「さあ子どもたちの未来をはなしませんか」汐見稔幸著
「幼児教育のデザイン」無藤隆著
「好奇心が育む学びの世界」利根川明宏著
「アクティブラーニング」をする前に知っておきたいこと
「アクティブラーニング」というのは少し抽象的な表現ということで、
2018年の3法令改訂以降は、より具体的な表現として「主体的で対話的で深い学び」といわれることが多くなりました。
「主体的で対話的で深い学び」と言う文言は、
2018年改訂の認定こども園教育保育要領、幼稚園教育要領に登場し、
小学校以上の学習指導要領では総則に入りました。
改訂された3法令には、日本の教育が目指す「3つの資質と能力」が示され、
その資質や能力を伸ばすために「主体的で対話的で深い学び」が大切と書かれています。
つまり、これからの保育では「主体的で、対話的で、深い学び」になる活動をすることが求められているのです。
一方で「幼児期の子どもは、自分の興味や好奇心から主体的に動いているので、すでに毎日アクティブラーニングをしている」と言われることもあります。
しかし、それが対話的な活動になっているか?
本当に深い学びになっているのか?こう言った疑問は残ります。
また普段どおり、こどもたちが好きなように遊ぶことが「アクティブラーニングだ」と言われると、
保育者のすることは一体なんなの?ということになってしまいます。
実際は、アクティブラーニングにおいて保育者の役割は非常に重要です。
子どもが好きに遊ぶことと、アクティブラーニングの知的な探求活動には、
多くの違いがあります。
「主体的で対話的で深い学び」と言う言葉が、保育業界に浸透してきたものの、
「じゃあどうすればアクティブラーニングになるの?」と疑問を持ちます。
つづいて、アクティブラーニングの人数規模についてですが、
白梅学園大学子ども学部 名誉教授の無藤 隆さんは、
クラスの十数人で何かの活動を協同的に行おうとする時、
そこで協力関係がしっかりと成り立つかと言うと、発達心理の常識的にいえばそれは無理。
小学校低学年でもかなり難しい。と仰ってます。「幼児教育のデザイン」無藤 隆 著より
どんな活動でも、人数が多くなればなるほど、順番を待たなければいけない子、興味がなくてもやらされる子、飽きてしまい他に興味が移っていく子なんかが出てきてしまいます。
そんな中、活動に積極的でない子に「ちゃんと参加しなさい」と保育者が叱ってしまう。
こんなことがあるかもしれません。
こうなると、その活動が本当に「子どもの主体的な活動」なのか。疑問が生じてしまいます。
保育者はいくつかのアクティブラーニングの機会を用意し、子どもたちはその中から
自分が好きな探求を進めていける。こんなスタイルが良いのではと思います。
さて、それでは、アクティブラーニングの始め方をみていきたいと思います。
アクティブラーニングの始め方
①起「出会いをプロデュースする」
子どもたちと様々な「モノ」が出会う機会を作ります。
これは、保育者が園の日常にはないものを用意する場合もありますし、
散歩に出掛けて偶然出会うものであったり、
保護者や地域の方からもらったりするものもあります。
また、時期や季節によって現れるもの。遠足で見つけたものなどでも良いでしょう。
おすすめは、自然物や自然現象です。大変奥深く、かなり面白い探求対象です。
冬の時期だけに園庭に現れる氷や
公園いっぱいに敷き詰められた落ち葉
雨上がりの虹、果物の酸っぱい匂い、光と影、泥団子、雑草や昆虫。
自然の中には、不思議がいっぱいです。
自然物や自然現象が良いと思うのは、それ自体を探求するのも面白く
探求の先に別の活動に繋がっていく可能性が大いにあるからです。
それ以外にも演劇やアートを題材にするのもOKです。
大事なキーワードは「感動」です。
何かと出会って「うわーっ」と驚く。
「すごくきれい!」と喜ぶ。
「なんじゃこりゃ?」と不思議がる。
こう言った感情の動きが探求活動の原動力になります。
保育者が「はい、こんなのがあるよ!」とみせる場合もあるし、
知らん顔して保育室に置いて、子どもたちが見つけるのを待つ場合もあります。
また保育者があらかじめ用意しなくても、日常生活や散歩の時など、子どもたちが
何に興味があるか、何に心を動かされているかを探り、
それらをアクティブラーニングの題材にするのも良いでしょう。
②承「疑問を抽出する、仮説を立てて、活動する」
まずは、子どもたちが出会った対象からの疑問を抽出します。
保育者が「これって、どうしてなんだろう?」と投げかけたり、
子どもたち自身が「あれ?これってどうして?」と口にすることもあります。
例えば、
「氷の中につぶつぶがあるよ?このつぶつぶなあに?」
「虹ってどうやってできるんだろう?」
「木の葉の色が違うのはどうして?」
「この葉っぱを潰すと臭いけど、他の葉っぱも臭いのかな?」
「泥団子に色をつけたいんだけど、どうしたらいいだろう?」
このように、保育者から疑問を投げかけることで、また、子ども達の中から湧き出す疑問を
ピックアップすることで、アクティブラーニングは動き出します。
疑問は、保育者自身が答えを知らないものでもOK。
大切なのは、答えを教えることではなく、答えを探して一緒に探求していく過程です。
疑問を抽出したら、
「どうして?」と聞いてみると、多くの子どもが自分なりの仮説を話し始めます。
この意見を保育者は否定しないように拾い上げ、聞き返したり、他の子にも意見を求めたりして、子ども達同士が対話する手助けをします。
そしてある程度の仮説が絞られてきた段階で次の活動を提案します。
「実験」もしくは「調査」です。
「実験」は、様々ま道具を駆使して対象物を観察したり、調べてみたり。
「調査」は、自分の足で、目で、鼻で、五感をフルに使って調べていくことです。
疑問から仮説を立て、調査や実験で検証する。必要なら再検証を繰り返す。
この流れが、アクティブラーニングの2つ目のステップとなります。
③転「過程を整える(整理、言語化)する」
普段の遊びに比べ、ある程度長い期間をかけて探求していく活動を持続させるためには、
保育者の役割が重要です。
保育者は、子どもたちの意見を拾い、受け止めて、全体としての議論を整理しながら話し合いを進めていき、子ども達一人一人が意見を交換しやすい環境を整え、考えたことを言葉にする手助けをしていきます。
また、クラス全体に共有することも大事です。
例えば、帰りの集いなどで、誰か一人の子どもをよんで「今日こんなことをしてたね?どんなことしていたのかみんなに話してくれる?」と投げかけるのも良いですね。
そうすることで、クラス全員が今どんなことが行われているかもわり、興味が出れば明日は自分もやってみようかな。と考えられます。
また、発表した子にとっても、自分のしていることを共有することで、「深い学び」に繋がっていきます。
結④「保育ドキュメンテーション」にしてみんなと共有しよう。
アクティブラーニングで対象物との対話を深めて学んだことを
「保育ドキュメンテーション」で子ども達や保護者の方他の保育者に
共有していくこともおすすめです。
保育ドキュメンテーションとは、写真付きで保育エピソードを描いていく、
保育の共有に使われる記録です。
保育のエピソードと共に、子どもの感じたこと、考えていたことを推察し、さらにそこにどんな育ちがあるか、と言うことを書いていきます。
子ども達同士で自分たちの調査や実験の経緯を振り返ることもできます。
それを見た保護者や他の保育者からも何か良いヒントがもらえるかもしれません。
さらに活動が深まってくると、アクティブラーニングは、派生してさまざまな方向へと伸びていくかもしれません。
こういった活動の変化は、アクティブラーニングの面白さの一つでもあります。
汐見稔幸先生は「子どもたちの既有の知識と新しく発見した知識」このふたつがつながることを目指すのが主体的で対話的で深い学びの「深い」にあたるところ」だと言っています。
『好奇心が育む学びの世界』利根川明宏著 汐見稔幸解説より
保育者として、子ども達が自分の知識と新しい発見を結び付けられるように、
手助けしたいところです。
まとめ
「アクティブラーング保育の始め方4つのプロセス」
アクティブラーニングの保育のはじめ方は、
起承転結の4つのプロセスで考えるとわかりやすいです。
起①出会いをプロデュースする
子どもたちが「感動」する、心が動かされる「モノ」との出会いを作る。
子どもたちがすでに感動している「モノ」を対象にするのもありです。
おすすめは自然物や自然現象です。奥深くて、色々と発展していきます。
承②子ども達の疑問を抽出し仮説を立てて、活動する。
出会った対象から、疑問を抽出し、仮説を立て、それに合う活動、実験や調査を行います。
疑問は保育士が答えを知っているモノである必要はありません。
子どもたちの仮説を拾い上げ、議論を整理し、活動を一緒に行います。
転③過程を楽しむ(整理、言語化する)
子どもたちの知的な探求活動は、保育者が「整理、言語化」をしないと長続きしません。
応答的な対話で子どもたちの意見を受け止め、言語化する手助けをし、帰りの会などで全体共有の機会を作ります。
結④保育ドキュメンテーションで学びの共有をする。
せっかく好奇心を持って学んだ学びを共有しないのはもったいないです、
ドキュメンテーション見て子ども達自身が活動の振り返りをすることで、
より深い学びへとつながります。
学びや活動が深まると自然に次の活動に展開していきます。
知識はそれ単体ではなく他の別の知識や経験と結びつくことで強化されます。
柔軟に展開していく活動を見守っていきたいと思います。
4つの起承転結の流れを意識し、
アクティブラーニングする保育を楽しんでいただけたらと思います。
以上になります。
これからも、子育て中のママさんパパさんや子育て支援の方、保育士さんと一緒に
学んでいけたら嬉しいです。保育の学びやヒント、情報発信が出来たらと
思っております。少しでも、保育をしているみなさまの、お役に立てたら嬉しいです。
ありがとうございました。
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