こんにちは、みちると申します。保育士をしています。
毎日の保育では、子ども達の主体性を育み探究心を伸ばしたいと思い描きながら、
どうしたら、もっと子どもたちの「学び」を支えることができるのだろう?と
日々の保育を模索する毎日です。
子ども達を導く保育のカタチがあるだとすれば、この本は保育者にとって
「子どもの探究する姿の見守り方、導き方」のヒントになると思います。
意識するところ、見直すところ、変えていけるところを意識して読み進めていくと
より具体的な保育の学びになると思います。
好奇心が育む学びの世界
1.感動からスタートする
2.言葉を聞き、対話を重ねる
3.計画性と主体性のバランスを取る
4.道具の用意
5.子どもの育ちを考える
これららの
5つの保育のコツを意識し、
より良い保育の形を探っていくヒントになればと思います。
参考文献
『好奇心が育む学びの世界』利根川彰博 (著) 汐見稔幸 (解説)
①本書の概要
この本は、保育現場で24年間クラス担任をしてきた著者の、
保育実践の記録になります。
その実践の中で、
子どもたちの気持ちがどう動いたのか。子ども達がどんな事を言ったのか。
何を考えていたか。どんな挑戦があったか。どんな育ちが見えたか。
ということを写真を使ってドキュメンテーションの様に書いてあります。。
さらに、保育者自身の「なぜこの記録を取ろうと思ったのか」「この記録を取りながら何を考え、気持ちはどう動いたのか」保育者自身の気持ちや葛藤についても書かれています。
保育の中では失敗もすることもあり、
うまくいかないことも、立ち止まって改めて考え直すことと言ったことも書いてあります。
まさに、わたし達の保育の振り返りとなる本といえます。
記録のテーマは「氷との対話」「虹との対話」「木と紅葉の研究」「光と影との対話」
「モノからアートへ」など
アートやサイエンスの視点を中心に置いた保育が展開されています。
そして「汐見先生のコメント」としてページのところどころで
保育のポイントや解説が載っているのも保育のヒントや子どもへの心もちの参考になります。
汐見先生は、
2018年度施行の新しい教育要領では「主体的で対話的で深い学び」の体験が大切にされています。このエピソードでは「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」この3つの要素が見事に組み込まれているのを感じます。と仰っています。
本書のエピソード記録を追っていくと「子ども達の好奇心を育む学びを意識した保育」を理解することができ、自分たちの保育にも『好奇心を育む学びを意識した保育』の視点を持つことが可能になります。
②実践例。遊びの中のサイエンス
『エピソード記録「氷との対話」』
著者の幼稚園がある地方では、1月から2月にかけて寒い時期に、自然にできている「氷」と出会うことがあるそうです。
こうした「自然」は子ども達と出会わせたいものとして、多くの保育現場で取り上げられ
扱われてきています。
しかし、子どもたちにどんな出会いを体験してほしいか。
ここが確かになっていないと、科学的な知識を与えるだけの活動になってしまいます。
また保育者の取り上げたいものと子どもたちの興味がかみ合わなくて、対話が薄っぺらになってしまうといったこともあります。
では、どうすれば子ども達の知的好奇心を刺激し、夢中になって学んでいく姿が見られるのでしょうか‥。
1月16日、園庭に雪が積もりました。
こんなに積もるのは、1年に1度,2度ぐらいのことです。
その後、日中に雪は解け、夜中に凍る。そんなことを繰り返すうちに、朝、園庭には、いたるところで氷が出現するようになります。
氷をじっくりと見てみると、土に交じっている部分と透明度の高い部分がある。
太陽の光にかざして角度を変えて見てみると、まあ、なんと美しいことでしょう。
「この氷を子どもたちが見たら、どんな反応するのだろう」と心が躍ります。
著者は氷を手にして保育室に入り、氷をテーブルの上の半透明の容器の上に置きました。
子どもたちは、関心を持って集まります。そして、手で触り、その感触や冷たさを確かめたり、氷越しに世界を眺めてみたり、様々な「氷との対話」が始まります。
そのうち、一人の子が声を上げました。
「白いツブツブがある!」
著者はこの言葉を聞き逃しません。
確かに、よく見てみると、氷の中にはツブツブがあります。
このツブツブ、角度によって見えたり見えなかったりします。
他の子どもたちも関心を示します。白いツブツブを自分たちでもじっくりと眺めています。
誰かが「虫眼鏡なら、ツブツブが良く見えるんじゃない?」といって、虫眼鏡を持ってきます。
そして「泡だ。なんか泡みたいに見える」と報告してきます。
別の子は「横から見ると、なんかトゲトゲみたい」と視点を変えると見え方が変わることを指摘しています。
こうして、それぞれの子ども達による、探究の物語が始まりました。
子どもたちは園庭に出ます。朝晩に冷え込んで出来た氷が園庭にはたくさんありました。
園庭といっても、どこも同じ状態ではありません。
たくさん日が当たるところと、ずっと日陰になっているところ。
水の通り道になっている所は、簡易なスケートリンクのようになっています。
スケートごっこを始める子もでてきました。
そんな中「きれいな氷があった」と、保育者に報告にきてくれる子どもがいます。
そして、いろんな子が氷を持ってきます。
見てみると、どの氷にもやっぱり「ツブツブ」がありました。
「やっぱりツブツブがある」と思わず口に出すと、氷を持ってきた一人が反応します。
「氷がシャボン玉みたいになっているんじゃない?」
別の子は「中に水が入っているのかも」と言います。
また別の子は「雪の結晶がみんなで固まって、丸く見えているんじゃない?」
それぞれが自分の考えを口にしだします。
一人ひとりが、自分なりの考えを表現する。そこに著者は感動しています。
「あぁ。この子は、こんな風に世界を見ているのだなあ」と。
それは保育者にとって発見になり、保育者自身の学びにもなります。
そして、クラスでの話し合いが始まります。
「ツブツブ」の謎に迫る!クラスでの対話!です。
片付けの時間となりクラスのみんなで部屋に集まると「氷のツブツブ」のことが話題になっています。
「スケートしていたところの氷はツブツブはなかったよ」
一人の子が言います。
「ツブツブの氷はどこにあったの?できる場所によって違うんじゃない?」
もとから研究が大好きな男の子が、いきなり場所によって違うと指摘をしてきます。
保育者が他の子の意見を伝えてみると、さらにいろんな意見が出てきます。
「中に凍っていないやつが入っているんじゃない?」
「ヒビじゃない?」
「空気かな」「私も空気だと思う」
「あわ?」
「雪が氷の上に振ってきてそれが固まったんじゃない?」
「全部、中も固めようとしたのに、動いちゃって、そこだけ何もなくなった」
「水かも」
「氷の中に氷が入ってる?」
「全体が氷じゃん」
水かな、空気かな、雪かなぁ。と次第に、興奮を伴いながら、次々と意見が出されていきます。
テーマを共有して、仲間の意見に耳を傾け、自分の意見を出し合っていきます。
最初は興味なかった子も、クラスの仲間が熱く語っていることで、興奮が伝染し、
自分の意見もいう様になってきます。
著者は、もうワクワクしながら、懸命に言葉を聞き漏らさないようにメモを取っていきます。
そして、出てきた意見の中から、
ツブツブの正体には「水」「空気」「氷」「何もない」の4つがあるね。と整理をしました。
そして、それを受けて子ども達もまた考えます。
「氷の中に水が入っていたら、動くはずだよ?」
その意見を受けて、何人かが立ち上がり、実際に氷を持って動かしてみます
朝に虫眼鏡で氷を見ていた子が「虫眼鏡で見ると、あわのように見えたよ」と報告します。
ここで「どうやらツブツブの正体はあわらしい」というムードが広がります。
すると、一人の子が言います。
「お鍋ってブクブクするじゃん。あれとおんなじじゃないの?氷は冷たくてブツブツ」
それを聞いた別の子からは「熱いのと冷たいのと、逆じゃん!」という声も上がります。
ブクブク、ブツブツ。音の対比も韻を踏んでいて面白い。
著者は「氷のツブツブ」がこんなことにつながっていくなんてと驚いています。
こんな風にして一日目の探究は続きました。
さて、次の日。
欠席していた子に昨日の氷の話を伝えると、「それは空気だよ」とはっきりと答えました。
「じゃあ、どうして空気が入るの?」と聞いてみると、
「氷ができる時に、空気が下りてきているんじゃない?」とジェスチャーで説明します。
すると、それを聞いた他の子が、「水って空気が混ざっているんだよ」と言いました。
このやりとりを聴く中で、急に何かと何かがつながったようです。
「魚って、水の中で呼吸するじゃん?水を飲んでエラからだして息をしている!」
この子の意見は、他の子には理解が難しいようです。
代わりに保育者が簡単に説明すると、それを聞いた男の子が「イルカは息をするときに顔を出しているじゃん」と反論してきます。
すると、それを聞いたまた別の子が「イルカは哺乳類だよ」と指摘します。
この子は普段から図鑑を見るのがすきな子です。
子どもたちは「哺乳類って、なんだ?」と早速、保育室の図鑑を確かめます。
図鑑には、イルカは魚の仲間ではなく哺乳類と書かれています。
なんとウサギもヤギも哺乳類だと知り、クラスは騒然となるのです。
氷のツブツブを起点に、学びは広がって、探究は深まります。
色々な意見が出て、反論が生まれ、再反論もあります。対話を重ねることでいろんな見方が交錯し、新たな疑問も生まれてきます。
子どもたちの本質に迫る疑問は、普段の生活の中のちょっとした気づきから生まれます。
改めて、子ども達の「すごさ」というものに気付かされます。
この後、ツブツブの探究はいったん終了します。しかし、「きれいな氷を作ろう」という気持ちから、様々な氷を作る実験がはじまり、できた氷に対して様々な道具を使いながら関わる様子も書かれています。
子ども達は、魅力のある素材を「どうなっているのだろう?」と眺めたり、考えたり、または実験するなどして、遊んで、遊んで、遊び倒して、対象の理解をどんどんと深めていきます。
子ども達の探究心は思わぬところまで進んだり、または突然終わってしまったりする様も書かれています。
子ども達の探究しているテーマが「正解」にたどり着かなかったとしても、その「疑問をかかえ続けること」がとても重要なことと書いてあります。「数年後に謎が解ける時がくるかもしれません。小学校で学習する時に、ふと、つながって、興奮する子どもの姿を想像するのも楽しいものです。」とも書いてあります。本当にそう思います。
保育者の心も、子ども達に負けないぐらい「好奇心という探究心」で激しく動いているのです。
記録を通して、子どもたちの遊びと学びの面白さが伝わります。
③好奇心を育むとは
○感動からスタートする
好奇心は、子ども達の「驚き」や「感動」そして「発見」から学びがスタートします。
主体的な学びは、内から出てくる気持ちに沿って進めていきます。
「発見する」ということは、今まで気づけなかったものを見つけることです。
他の誰でもない自分が発見するから価値があり、心が弾み、誰かに共有したいと思うのです。
仲間の発見で「本当だ、今まで気づかなかった!」と思うことも大事。
氷との対話で「氷の中にツブツブがある」と発見した子ども達は、
自分たちで発見したことだから大切で、「どうして氷の中にツブツブがあるんだろう」
「場所によって違うのはなぜ?」と自然に疑問が膨らんでいきました。
同じように保育者自身が感動することも、
その感動を子どもたちと共有したいと思うことも、
子ども達と一緒にワクワクすることも非常に大切な要素になってきます。
○言葉のひとつひとつをしっかりと聞き、対話を重ねる
著者は「氷の中にツブツブがある」という子どものつぶやきを聞き逃しませんでした。
また、子ども達の意見を、ひとつひとつメモに取りながら、どの意見も大事にしました。
そして、みんなの意見を共有します。
すると、子どもたちは「なぜツブツブがあるのだろう」という疑問を持ち、
探索や議論が始まったのです。
議論は次第に熱く、またいろんな仲間を巻き込んでいき、さらに多様な意見が飛び出してきました。
保育者は対話の場では、ぐっと我慢して答えを出しません。
もしここで、保育者が答えを言ってしまったら、子どもたちの興味関心は一気にしぼんでしまいます。
様々に不思議に出会ったときに、子どもたちの中には「なんで?」「どうして?」が渦巻いています。そして懸命に思考します。
誰かの意見を聞き、反論を聞き、自分の意見を出そうとします。
保育者が子ども達の意見を聞き、大切にし、対話ができる関係性を築くことで探究心は深まっていくのです。
○計画性と自主性のバランスを取る
冬になれば子どもたちは自然に雪や氷を体験することができます。
しかし「それらが、子どもたちの感覚・感性に十分に染み込むかたちで体験できているかというと、必ずしもそうではない」と白梅学園大学子ども学部名誉教授の無藤隆さんは指摘します。
身の回りに現れる自然現象を、子どもたちの感覚や感性に染み込ませるには、
保育者はどう関わっていくべきかを考える必要がある。と仰っています。
ただ単に、自然体験を与えるだけでは十分じゃないし、かといって科学的知識を教え込むのも違う。
子どもたちが十分に自然と関わり、対話をし、夢中になって遊ぶことで、好奇心で見ている対象を心と体で理解するには、保育者の計画性が必要です。
保育者の計画性と子どもたちの主体性のバランスが取れていることが大事になってくるのです。
子ども達に学んでほしい事、体験してほしい事を導きながら、子ども達の主体的な活動を止めない。
保育者が出るところ、保育者が我慢すべきところ。
子どもたちの遊びや学び、対話の様子から、保育者が関わり方を判断するのが求められていると言えるのです。
○道具の用意する
子どもたちの学びや探究が夢中になっている時に、その探究に必要な道具がすぐに使えるところにあり、普段から使い慣れていることが求められます。
今回のエピソード記録の中でも、虫眼鏡や図鑑が出てきました。
その他にもビニール袋や大小さまざまな容器、絵の具、スポイト等を使って、氷で遊んでいます。
どんなものが子ども達の学びを深める手助けになるか。それらを考えて環境を設定していきたいと思います。
最後は、
○子どもの育ちを考える
今回の記録の中の様々なプロセスや対話の中で、子ども達の心には何が身についたのか?
これらを考えることが保育の大切な課題です。と汐見先生は仰っています。
氷や水、空気の科学的説明や理解、というのは学びのたったひとつにすぎません。
大切なのは資質や能力の育ち「学びに向かう人間性の育ち」です。とも仰っています。
子ども達の「ああでもない」「こうでもない」と思考し、対話を通して考えを深め、視点を変えて物事を理解していく姿に、子ども達の「学びに向かう人間性の育ち」が見られました。
氷のツブツブの正体を取り出して教えるだけでは何も意味がありません。
大事なのは、子ども達が「なぜそうなるのかを探究していくプロセス」の中にあるのです。
まとめ
2018年にできた新保育所保育指針、幼稚園教育要領では「主体的で対話的で深い学び」の体験が大切にされています。
子ども達が自分から「したい」「やりたい」「知りたい」と思って学ぶこと。
みんなで意見交換しながら、他者を通して知識を深めること。
新たに知ったこと、出来るようになったことが、それまでに学んだことや知識やスキルと結びついて、より高度な認識を得られる体験を大事にしていこうと言っています。
5つ保育のコツを用いながら、を意識した保育をしていきたいと思います。
子ども達と向き合って、想像力を刺激して、子ども達の素敵な発見に一緒に驚き
探究して、ワクワクする『好奇心が育む学びの世界』を子ども達と楽しんで過ごしたいと
思います。
以上になります。
今日はありがとうございました。
これからも、子育て中のママさんパパさんや子育て支援の方、保育士さんと一緒に
保育を学んでいけたら嬉しいです。
保育の学びやヒント、情報を発信できたらと思っております。
保育をしているみなさまのお役に立てたら嬉しいです。
どうもありがとうございました。
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